英語のお勉強
寓話の迷い道 in 英語格言の森 その9

寓話といえば、動物寓話を思い浮かべやすいですが、題材はそれだけではありません。先月に続いて、今月も「ヒト」が中心のお話を紹介します。(といっても、先月と異なり、人間関係に焦点はあたっておりませんが。)


「鶏と下女の事」


ある家のあるじ二にんの下女を使はれたが、払暁(ふけう)にそれらを起こいて働かするために、鶏を飼うて時を計られたを、下女これを大きに嫌うて、かの鶏さへないならば、これほど払暁には起こされまじものとおもうて、二にん言ひあはせて、ひそかに鶏を殺いた。家のあるじ鶏の声にこそ時を知って起こされたれども、鶏が無ければ時節をはかることが叶はいで、夜なかまへから起こいて、仕事を言ひつけらるるによつて、下女ども大きに退屈して鳥はものかはと苦しうだ。


これは、今からおよそ400年前の日本の寓話集に収録されているお話です。その寓話集では、このお話に「遠慮のないものは、後の難儀をかへりみいで、初一念に憤りを散じて、大事が出来してから、悔やむに益ないことをのみ仕出だすものぢや」という教訓が付されています。


この教訓は、見方を変えると


It is no use crying over spilt milk. <覆水盆に返らず>

とも表現出来ます。何事かを軽率に行なって、結果自分が痛い目にあうというのは、よくあるお話です。しかし、時には、即座に行動を起こすことも必要となりましょう。実際、


Make hay while the sun shines. <善は急げ>

という言葉もあり、これも考え方として広く認められているということが分かります。とはいえ、これはいわば後悔することの分かっていることをを引き延さないように戒めるものであり、上のお話のように、何か新しいことを熟慮しないままに行なうことは、やはり危険も大きくなります。

Haste makes waste. <急いては事を仕損じる>

というわけで、短絡的に行動することは慎むべし、ということになります。とすれば、二人の下女は、よく考えて、鶏の存在を消すのではなく、鳴く時間の遅い鶏を見つけてくるべきだったのかもしれません。――まあ、いくら考えよと言っても、結果の予測はなかなか難しいことでもあり、あるいは後悔することが先に分かっても、それをやらざるをえないこともあったりして、事はそう単純でもないわけですが。

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