英語のお勉強
寓話の迷い道 in 英語格言の森 その2

英語では、暑い時期、とりわけ7月はじめから8月中頃までをThe dog daysと呼びます。
これは、Dog Star(シリウス)がこの時期に太陽と共に出没することにちなんだ呼び方です。
9月はいわば犬の日々の過ぎたあと。まだまだ熱い足跡がたくさん残っていますね。
さて、犬は昔から人間と生活している動物ですが、古代の「イソップ寓話」にも犬の登場する話が数多くあります。今回はその中でも有名なものを紹介しましょう。




「肉をくわえて川を渡る犬」


ある犬が肉をくわえて川を渡っているとき、泳ぎながら水面に映る自分の姿を目にし、他の犬が別の獲物を運んでいると考えて、それを奪ってやろうと思いました。けれど、その期待は裏切られました。彼は、口にくわえていた食べ物を失ない、さらに欲しがっていたものに触れることも出来ませんでした。

これは1世紀のラテン語寓話集に収録されているものです。ものによっては、犬が橋を渡っている場合もあります。この話から教訓を得るとすれば、


Grasp all, lose all. 〈貪欲になるなかれ〉

といったものでしょう。日本語では、「虻蜂取らず」に近いでしょうか。

ところで、水面に映る「自分」の認識というモチーフは、ギリシア神話に登場するナルキッソスの逸話にも見られます。彼は水面に映る「自分」が分からず、自分自身に恋をし――当然ながら、報われません。じつは、鏡などに映る姿を「自分」と認めることは、ヒトにも簡単なことではありません。動物の場合は、それが可能かどうかさえ不明です。古代の人々はそんなことは知らなかったでしょうから、この犬のお話の成立背景を考えると、そもそも犬を揶揄する意識が一般にあったのかな、という気がします。

たとえば英語辞典でdogを引くと、じつにネガティブな(俗語的)用例に溢れていて驚かされます。今回の話もそうですが、犬の登場する寓話で、否定的な意識のもとに犬が描かれている例はたくさんあります。さらに、古代ギリシアでは、恥知らずな人間を「犬」と呼んだり...などなど、色々調べていくと、その扱いに文化的な背景があるにしても、貶められている犬への同情の念が多少なりと湧いてきます。

そういうわけで、最後に犬のために格言をひとつ。

Every dog has his day. 〈生きていればいつかはいいこともあるさ〉

|英語のお勉強コーナーに戻る|